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 中国の都市における新たな競争の幕開け
〜ユビキタス社会構築に向け〜
(2010年8月19日)


  「都市のグラミー賞」が中国にあるとするならば、2009年のチャンピオンは無錫市だろう。「感知中国」の中心として、2009年に無錫市は全国の焦点となり、ユビキタスの旋風は無錫市をその歴史的舞台の中心へと推し進めている。北京、上海、福州、深?、広州、重慶、昆山、成都、杭州などの都市もユビキタスの発展を迅速に進めており、中国ユビキタス産業における先発都市となっている。パソコンとインターネットを代表とした情報産業の発展の波が通り過ぎ、中国の都市において、新たな競争が幕開けしたのである。

 

  ユビキタス産業の都市構造において、まずパソコンとインターネットを代表とする情報産業発展の起源地である深?を含む珠江デルタ都市を挙げなければならない。世界情報産業が中国へ移行するに伴い、珠江デルタ都市は地理的・コスト的・政策的優勢を備えているため、中国電子情報産業の重鎮へと急速に成長した。しかし驚くのは、ユビキタス産業発展ブームの中、深?や佛山など情報産業の良好な基盤を持つ都市の発展は著しくなく、反対に無錫市に先行チャンスを奪われているということである。もし電子情報産業の初期発展が珠江デルタ都市に立脚することが自然であるならば、ユビキタス産業における都市の実力の構築は、都市の総合的実力と意思の体現によるものだと言える。この角度から見ると、ユビキタス産業の発展における無錫市の地位は偶然に確立されたものではないのである。

 

  長年の発展を通し、無錫市は情報産業チェーン川上の IC設計、パッケージング、製造における優位性を既に確立しており、無錫市の IC企業はその数と生産額においては全国トップを走り、ユビキタス産業の発展に技術と産業の基盤を提供している。さらに、無錫市の GDPは全国でも TOP10に入り、その経済基盤は無錫市のユビキタス産業の急速なスタートに肝心な資金保証を与えているのである。更に重要なのは、江蘇省及び無錫市の各級政府はユビキタス産業の発展を高く重視しており、またハイテク産業の発展の引率と指導において当地政府は豊富な経験を持ち、ユビキタス産業発展の計画、重点科学研究機構の導入、企業誘致などを行っているということである。 2009年 8月から現在までの 8ヶ月の短い間に、無錫市ユビキタス産業研究院、国家センサー情報センター、中国ユビキタス研究発展センター、中国センサーネット革新模範区、中国センサーネット革新研究開発センター、中国ユビキタス技術産業連盟が次々と設立された。ユビキタスを応用した空港の侵入防止システムも正式に使用が開始された。無錫市のユビキタス産業 チェーンの推進速度と効率は、ユビキタス産業の発展に対する無錫市の決心と志の現れなのである。ユビキタス産業は新興性が高いため、技術研究開発、ビジネスモデル、産業標準、産業チェーン構築などにおいて、無錫市ユビキタス産業は長い間初期段階にあるが、それでからこそ、ユビキタス建設は都市建設に対して積極的意義があると言え、無錫市はその発展を目指しているのである。

 

  無錫市以外に、北京、上海、広州、重慶、福州などの都市も各地域の産業基盤と実際の需要に基づいてユビキタス産業の発展を積極的に進めている。センサーなどの核心部品、インターネットフレームワーク、システムインテグレーションからアプリケーションの全産業チェーンに及ぶ無錫市ユビキタス産業とは異なり、北京は現在主にその強大な科学研究力に立脚し、最前線技術の研究開発と産業標準制定の角度からユビキタス産業に参入しており、先発都市である無錫市とは差別化した発展を遂げている。中関村ユビキタス産業連盟は、清華大学、北京大学、北京郵電大学、中科院ソフトウェア研究所、中国移動(チャイナ・モバイル)などの科学研究機構と企業により 2009年 11月に正式に設立された。上海、広州、重慶などの都市は主に現地のユビキタスアプリケーション市場に立脚し、工業・交通・物流・医療用センサーなどにより都市の情報化レベルを全面的にアップさせることからユビキタス産業に参入している。この中、万博の RFIDチケット、 RFIDによる食品チェーン管理なども、上海におけるユビキタスアプリケーション普及の牽引力となっている。その他、福州はユビキタスの応用を大きく推進し、 RFID関連のシステムインテグレーションをユビキタス産業発展の重点としており、ユビキタス産業発展の行動案も近く発表するだろう。上記都市のユビキタス産業に対する重視は、ハイテク戦略型新興産業の巨大な経済効果に対する地方政府の理解の現れであり、同時に科学技術において中心的存在となるというこれら都市の決意を表している。

 

  中国の都市においてユビキタス産業の競争は既に幕開けされており、無錫市は現在リードしているが、後発都市が今後追いつくのも不可能ではない。現在ユビキタス産業の発展は、都市の経済発展に核心的作用を果たしているだけでなく、都市イメージ普及への作用も日々明らかになってきている。ユビキタス産業発展の経験を通し、ハイテク産業の建設と発展における中国各都市の経験は更に豊富になり、その総合的な実力も更にアップすると予想できる。各都市のユビキタス産業の発展はこれを最終目的としているのである。


 

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