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 中国エネルギー産業の発展現状と対策
〜再生可能エネルギーについて〜
(2010年9月20日)


  エネルギー科学技術は、エネルギーの開発、生産、転換、輸送、分配、貯蔵及びその総合的利用に関する科学技術である。現在、国内・海外ともに「エネルギー科学技術産業」に対して明確な定義と概念を掲げてはいないが、エネルギー科学技術に従事している企業には主に以下2つの特徴がある。まず、エネルギーの研究開発に力を入れているということである。研究と開発による収入が売上に占める割合は大きく、研究開発員(科学者、エンジニア、技術者を含む)の数も多い。さらに、その製品は高い技術価値を持っている。技術の多くが先端技術、または技術的に画期的なものなのである。

 

  通常、エネルギー科学技術産業とは、エネルギー産業への科学技術製品とサービスの提供が可能で、大量の知的財産権を持ち、資本・知識・技術型で且つ製品の附加価値・収益率が高い企業組織と、市場におけるその相互関係の集合を指す。エネルギー科学技術産業は、伝統的エネルギー科学技術産業と新エネルギー科学技術産業を含む。

 

 一 、産業発展の現状及び特徴

  全体的に見ると、中国のエネルギー科学技術産業は未だ成長初期の段階にある。産業の規模は小さいが発展は迅速で、一部新エネルギー科学技術の産業規模は世界でもトップに立っており、さらに世界先端レベルを既に実現、またはそれに接近している科学技術もある。

 

 1、伝統的エネルギー科学技術が依然として産業の中心である

 

  エネルギー科学技術産業は科学技術産業の一部であり、エネルギー産業にサービスを提供している。そのため、エネルギー科学技術産業の発展は中国エネルギー産業の規模及び構造と密接に関連している。長期に渡り、中国のエネルギー消費構造は、「多炭・少油・ 缺気(石炭が多く、石油が少なく、天然ガスが不足している)」という特徴を持ち、再生可能エネルギー は主に水力発電となっている。原子力発電、風力発電などの新エネルギーはまだ少量に限られているのである。先進国と比べると、実質生産高原単位のエネルギー消費量は 31400BTUs/ドルと高く、世界平均レベルの 2.5倍、アメリカの 3.5倍、日本の 7倍である。そのエネルギー構造からも分かるが、伝統的エネルギー科学技術産業が中国エネルギー科学技術産業の中心なのである。

 

 2、再生可能エネルギー科学技術産業がさらに重視されている

  近年、石油価格の高騰や環境保護問題の突出により、再生可能エネルギーは世界中の投資機構の注目を集めている。 2007年中国において、再生可能エネルギーへの投資額は 760億元に達し、世界でもトップクラスとなった。投資は風力エネルギーに集中しており、水力エネルギーの他にも、風力発電産業、太陽電池産業などの再生可能エネルギー科学技術産業も急速に発展している。

 

 3、産業の集中度はアップし、産業クラスターの効果が明らかになっている

 

  現在、伝統的エネルギー科学技術の研究開発と生産に従事する企業が増えてきている。中国エネルギー産業の一部大手企業は、独自の科学技術開発部門や技術サービス部門を持ち、その一部は産業化されている。さらに、科学研究所に属する多くのハイテク企業も中国エネルギー科学技術産業の主力的存在である。河北省保定市には電力科学技術産業が主導の「中国エレクトリシティ・バレー」、遼寧省盤錦市には石油科学技術産業が主導の「石油ハイテク産業園区」が設置されている。また、山東省徳州市における太陽熱温水器産業と江蘇省無錫市における太陽電池産業の発展も既に規模効果を示し始めている。

 

 4、投資規模は拡大を続け、クリーンエネルギーと新エネルギーに集中している

 

  近年中国において、エネルギー科学技術産業への投資は増えつつある。そのうち、伝統的エネルギーへの投資規模は毎年平均約 10%拡大し、主にクリーンエネルギー技術の研究開発に集中している。新エネルギー産業への投資の増加率はさらに高く、近年 50%以上に達している。

 

 5、産業の発展はグローバル化している

 

  世界的な発展の背景の下、エネルギー科学技術産業は地域や国の枠を超え、産業資源は融合され、互いに浸透している。世界中の国々は国際間の協力や科学技術の輸出入を通して、技術の普及や移転を強化し、国とそのエネルギー産業の発展を推進している。例えば、中国は 2007年に「導入―消化―吸収」という方法で第 3代原子力技術を導入した。また、デンマークの風力発電技術は EU及びその他世界各国で導入された。 BP、 GE、 ABBなどのグローバルエネルギー企業は、世界中に研究開発センターや子会社を設置することで世界エネルギー産業に参入した。

 

 二、産業発展が直面する問題及びそれに対する提案

 

  中国エネルギー科学技術産業は迅速な発展を遂げ、業績は良好である。しかし、産業発展の過程において、核心科学技術の開発力の不足、研究成果普及の困難という問題に直面している。

 

 1、中国国内の科学研究プロジェクトは「セット」で進められることが多く、基礎研究が弱い。基礎研究、応用研究、製品開発という 3つの段階に分けて実施するべきである

 

  科学研究の「セットプロジェクト」というのは、一つの研究方向における基礎理論研究、応用研究、製品開発の 3つの段階を一つのプロジェクトとして行うことを指す。「セットプロジェクト」の最大の利点は、プロジェクト周期が短く、早急に効果を示すことができることである。欠点は、基礎研究と応用研究の段階での研究が充分ではなく、産業化に失敗するリスクが高いことである。この問題を解決するために、科学研究所はプロジェクトを 3つの独立した段階に分けて実施するべきである。基礎理論研究においては、研究プロジェクトの数を増やし、研究範囲を広げ、研究を深化させるべきである。一方、応用研究の段階においては、独立した産業インキュベーターを設立することにより、産業化のリスクを削減してプロジェクトの成功率を高めるべきである。

 

 2、専門技術とマネジメントの人材が不足しているため、人材育成システムを強化する必要がある。

 

  中国エネルギー産業は既に比較的完整した人材育成システムを構築しており、電力や石油などの領域において数多くの専門的人材が育成されている。しかし、海外の人材育成システムに比べると、中国ではエネルギー系の大学は設立されておらず、エネルギー産業の管理や戦略発展を統括できる人材の育成システムは未だ完璧ではない。さらに中国において、風力エネルギー、太陽エネルギー、バイオエネルギーなど水力エネルギー以外の再生可能エネルギーにおける人材育成は重視されておらず、これら一部の分野では人材が不足している。 2006年から施行された「再生可能エネルギー法」は教育行政機関に対して、再生可能エネルギーに関する知識や技術を普通教育、専門教育授業に導入することを義務付けた。同時に、中国再生可能エネルギー市場の活性化に伴い、教育機関は専門人材の育成を重視するようになってきている。

 

  上述の問題を解決するため、中国はエネルギー科学技術における人材育成システムを強化する必要がある。エネルギーマネジメントの人材育成を強化する一方で、専門的人材の育成における国際協力を強化し、国際協力を通した人材開発という形で国内人材を育成していくべきである。

 

 3、エネルギーの研究資金は少なく、様々な手段で投資を拡大させる必要がある

 

  科学技術への投資は産業イノベーションの物的基礎である。先進国に比べ、中国におけるエネルギー科学技術への投資水準は低い。石油産業を例にすると、中国石油企業の科学研究費は多国籍企業の 1/3にも達していない。科学研究への持続的な投資を保障するには、政府とエネルギー企業両者の努力が必要である。政府は投資における牽引作用を十分に発揮し、直接的な財政投入、税金優遇など様々な手段を通して投資を拡大し、科学技術資源を拡大するべきである。また、資金の監督システムを構築し、科学技術資金の不正使用を防止する必要もある。一方、エネルギー企業は単独で、あるいは他の企業・機構と提携して研究開発センターを設立し、科学技術の研究開発に対する独立した投資管理機構を配置した上で、銀行ローン、政府からの科学技術資金、企業内部資金などの申請及び管理を行い、研究開発への持続的な投資と管理を実施するべきである。


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