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 中国IC 市場における「家電下郷」政策の牽引力(2010年11月19日)


  「家電下郷」とは、政府財政部から補助金を受け、農村消費者向けの特定家電製品を研究開発・生産・販売する農村部家電普及推進プロジェクトである。 2010年2月に正式に全国範囲で拡大されて以来、「家電下郷」は業界内外の注目を集めている。 2月から現在まで、「家電下郷」は既に 4カ月以上全面的に推進されている。家電企業の販売データによると、この重要な内需拡大政策は、家電企業の販売市場開拓や輸出量の大幅削減において既に明らかな牽引効果を見せ始めている。

 

  「家電下郷」政策の拡大に伴い、産業チェーン全体に対するその牽引効果も明らかになっている。産業チェーンの最も川上の部分に位置する IC産業は、「家電下郷」政策を市場成長の新たな牽引力として注目している。その主な理由は、過去 2年間(特に 2008年)、中国 IC市場規模の成長率が鈍化しているという背景にある。中国 IC市場の全体規模は成長を続けたが、売上高の成長率は 2007年からわずか 6.2%という近年最低水準で、中国 IC市場が大きく展開されて以来初の一桁成長だった。

 

  マクロ的観点からみると、金融危機と並び、世界電子機器製造産業の中国移転の鈍化が 2008年の中国 IC市場に対する主な影響要素である。産業チェーンの角度からみると、中国市場の成長の鈍化と川下完成品の生産量成長の鈍化は直接関連していることがわかる。工業情報化部の統計データによると、中国における携帯電話生産量の成長率はわずか 6.7%、テレビは 12.2%、パソコンは 17.1%である。 IC需要の大きなこれら完成品の生産量の成長率は 2007年からそれぞれ一定の低下をみせているのである。

 

  図 1 2004-2008年中国 IC 市場の売上高と成長率

2004-2008年中国 IC 市場の売上高と成長率

  データ出典: CCID (賽迪顧問) 2009.01

 

  全体規模が数千億元に上る中国 IC 市場において、現在「家電下郷」対象製品による IC需要は限られている。しかし、発展趨勢からみると、農村市場において家電製品に対する潜在需要は大きいことがわかる。それは、現在中国農村市場において家電製品の保有率が依然として低いレベルに留まっているからである。さらに、政府による農村建設のさらなる進展に伴い、農村の各種インフラは改善されており、家電市場における有効需要の増加に良好な基礎を打ち立てている。これは間違いなく、低成長率またはマイナス成長に陥っている IC産業に新たな発展チャンスをもたらすこととなるだろう。

 

  政府関連部門の情報によると、「家電入郷」プロジェクトへの 2009年の国家補助金は 2008年の 90億元から 150億元へ増加され、それにより 1000億元以上まで内需を増加させることができると予想される。この政策は少なくとも 5年間は続き、家電製品の売上高を 5000億元以上まで増加させる見込みである。これは、中国国内の 12万以上の家電企業にとって、低迷から脱出し、再び急速に成長するための有力なサポートとなるだろう。また、 ICサプライヤーにとっても逃してはならない市場チャンスなのである。

 

  ICサプライヤーにとって、タイムリー且つ的確に市場戦略を制定することは非常に重要である。「家電入郷」対象製品の動向や市場情報に注目し、完成品の消費状況や、「家電下郷」対象商品の IC製品に対する独特な要求を把握することにより、「家電入郷」政策の要求に対する自社製品の適応性を向上させることができるのである。さらに、積極的に企業内部の製品戦略を調整し、ミドル・ローエンド製品の普及と「家電入郷」対象製品の独特な要求に応じた関連 IC製品の研究開発を強化することも重要である。積極的にマーケティング戦略を調整し、中国国内の家電企業との技術・ビジネス提携をさらに密接化させることにより、 IC製品と完成品の共同協力を実現させるべきである。


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