中国Bizコラム・CCIDの眼

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中国でも広がるビッグデータの応用(13/10/08)

 今やビッグデータの時代だ。クラウドコンピューティング、モバイルインターネット、ユビキタスなど次世代情報技術の急発展で世の中の情報化水準は大幅にアップした。世界中でこれまでにない速さでデータが増殖している。ビッグデータの戦略作りや応用の際の意思決定のあり方、またデータの海に飲み込まれることなくいかにビッグデータを使いこなすかに、政府や企業の幅広い関心が集まっている。


 ビッグデータは企業の意思決定の「知恵の宝庫」とされる。ビッグデータがもたらす不確定性・予測不能性と向き合う中で、企業の意思決定や運営モデルに革命的な変化が生じている。従来のトップダウン型で少数のエリートの経験と判断に依存した戦略決定が鳴りを潜め、ボトムアップ型でデータ分析に基づく社会化された意思決定モデルが勃興しつつあるのだ。


 また、ビッグデータは科学研究の第四のパラダイムとされる。実験観察からの帰納、一般原理からの演繹、コンピュータシミュレーションの段階を経て、更にそこからビッグデータを基礎とするデータ集約型科学研究が分離して、新たな科学研究のパラダイムとなった。「全てのデータを扱う(n=全部)」、ファジー演算、重相関関係を特徴とするビッグデータパラダイムは、科学研究方式の変革を推し進めただけでなく、人類の思考方式にも大変革をもたらしている。


 更に、「21世紀の新たな石油」とも言われる。米国の研究機関の統計では、ビッグデータは米国の医療サービス業に毎年3,000億ドル、欧州の公共経営には同じく2,500億ユーロの価値をもたらしている。米国の小売業の純利益を60%上げたり、製造業が製品開発・包装コストを50%減らしたりする一助となった。


 つまり、ビッグデータの応用は現在、企業領域から社会領域へ、更には国家戦略の分野にまで広がっている。まずは良好な情報化基盤を有する業界がビッグデータによる受益者となる。


 ビッグデータは、インターネット業界ではプレシジョン・マーケティングのサポート手段となっている。淘宝のOcean Baseは高性能・大容量・高信頼性・低総保有コスト (TCO)の要求を満たし、大量の構造化データを処理する。同社がプレシジョン・マーケティングモデルの先駆者へと成長する足掛かりとなった。


 金融業界では適切な意思決定のバックボーンとなっている。中信銀行の信用カードセンターはビッグデータ分析システムの配備により、ほぼリアルタイムのビジネスインテリジェンス(BI)と秒単位の営業活動を実現。平均2週間かかっていた営業関連の処理を2〜3日に短縮し、取引量が65%増えた


 電気通信業界ではスマートパイプの転換の方向性になっている。中国移動広東公司が作った次世代請求明細照会システムでは、請求明細がリアルタイムで照会できるようになり、顧客満足度が大幅にアップした。


 小売業では市場の動向をリアルタイムで把握するのに必要なツールとなっている。農夫山泉はビッグデータ分析技術により売上高を約30%アップ、今まで5日だった在庫の回転周期を3日に短縮した。更に、データセンターのエネルギー消費を約80%減らした。


 国のビッグデータ戦略、科学研究の第四のパラダイム、企業の意思決定の新たなモデル…。今ビッグデータが理論から実践に向かっていることは間違いない。「中国計算機報」は、こうしたビッグデータの商業的・社会的価値を踏まえ、CCID(賽迪顧問)と共同でビッグデータ業界応用研究を始動。優れた応用事例を次々に紹介することで、ビッグデータの理論・技術・応用の進歩のために専門メディアとして貢献する。我々は既にインターネット、金融、電気通信の各業界ユーザーサイドからの積極的な反応を得ているだけでなく、インテルなど技術・ソリューションサプライヤーの広範な承認も得ている。全く新しいビッグデータのエコシステムが既に形成されているのだ。


  • 寄稿 :CCID(賽迪顧問)総裁:李 樹翀
  • 監修:ファーイースト・パートナーズ株式会社(CCID日本事務所)
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